切れないときは「①出力を上げる ②速度を下げる ③パス回数を増やす ④焦点を合わせ直す ⑤エアアシストを使う」の順で調整します。焦げる・溶けるときは逆に「出力を下げる・速度を上げる・エアアシスト・マスキング」。どの数値もメーカー値はあくまで出発点なので、必ず端材で試し切りをして詰めます。この記事は、原因の切り分けと直す順番を整理します。
レーザーの結果は、基本的にこの3つの組み合わせで決まります。考え方は「素材にどれだけのエネルギーを入れるか」です。
| 要素 | 強くすると | 使いどころ |
|---|---|---|
| 出力(%・W) | 切れ込みが深くなる/焦げやすい | 厚物・硬い素材 |
| 速度(mm/s) | 速いほど浅い/焦げにくい | 薄物・彫刻・焦げ防止 |
| パス回数 | 同じ場所を複数回なぞる=深く | 1回で切れない厚物 |
1mmあたりに入るエネルギー(線エネルギー密度)は、ざっくり 出力 ÷ 速度 に比例します。つまり「出力を上げる」と「速度を下げる」は同じ方向(深く切る)の操作です。厚くて1回で切れないときは、出力を上げすぎる前にパスを増やすと、焦げを抑えながら切り抜けます。
いきなり出力を最大にせず、次の順で1つずつ変えて試し切りします。
| 順 | やること | ねらい |
|---|---|---|
| 1 | 速度を1〜2割下げる | 同じ場所に長く当てる=深く |
| 2 | パスを1回増やす | 焦げを抑えて深さを稼ぐ |
| 3 | 出力を上げる(上限近くは避ける) | エネルギー追加。ただし焦げ注意 |
| 4 | 焦点(フォーカス)を合わせ直す | ピントずれは切れない最大要因 |
| 5 | エアアシストを使う/強める | 煙・燃えカスを飛ばし切り込みUP |
特に見落としがちなのが④焦点です。素材の厚みが変わったのにフォーカスを合わせ直していないと、出力を上げても切れません。CO2機では、焦点を板厚の中ほどに置くと厚物が切りやすくなります。
切れてはいるが断面が真っ黒、表面が焦げる——これはエネルギーの入れすぎか、煙の滞留が原因です。
木材は素材によってヤニの出方が大きく違います。シナ・バスウッドは比較的きれいに切れ、脂分の多い木は焦げやすい傾向です。
「設定は合っているのに透明アクリルだけ切れない」——これは設定の問題ではありません。ダイオードレーザー(青色・約450nm)は透明アクリルを“素通り”してしまい、エネルギーが吸収されないからです。出力を上げても切れません。
| 切りたいもの | 使うレーザー |
|---|---|
| 透明アクリル | CO2(10,600nm)のみ。鏡面で切れる |
| 黒・不透明の色付きアクリル | ダイオードでもOK(顔料が光を吸収) |
つまりダイオード機で透明アクリルを切る方法は基本的にありません(裏に塗装する等の裏技はありますが安定しません)。透明を切りたいならCO2機を使います。
「10Wの設定を20W機で使いたい」ときは、1mmあたりのエネルギー(出力÷速度)を同じに保つと近い切れ味になります。出力%を同じにするなら、速度をW数の比だけ変えます。
例:10W機で10mm/sの設定 → 20W機なら 10×(20÷10)=20mm/s から試します。注意点は2つ。① 同じ波長どうし(ダイオード同士・CO2同士)でのみ有効で、ダイオード↔CO2は素材の吸収率が違うので換算できません。② W差が2倍以上や厚物ではズレやすいので、必ず試し切りで微調整します。この計算は下のツールでも自動でできます。
Q. 出力を最大にしているのに切れません。
A. まず焦点(フォーカス)を疑ってください。厚みが変わったのに合わせ直していないと切れません。次に速度を落とす・パスを増やす・エアアシストを使う、の順で。最大出力の常用は管・素子の寿命を縮めるので避けます。
Q. 断面が真っ黒に焦げます。
A. エネルギーの入れすぎです。出力を下げて速度を上げ、エアアシストで煙を飛ばします。表面の焦げはマスキングテープを貼ると防げます。パスが多すぎる場合は減らします。
Q. 透明アクリルがどうしても切れません。
A. ダイオードレーザー(450nm)は透明アクリルを透過するため、設定に関係なく切れません。透明を切るにはCO2レーザー(10,600nm)が必要です。ダイオードでは黒・不透明の色付きアクリルを使ってください。
Q. メーカーの推奨設定どおりでも切れ味が違います。
A. 設定値は出発点です。同じ機種でも素材のロット・含水率・機械の状態で結果が変わります。必ず端材で試し切りをして、その個体・素材に合わせて詰めてください。